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「同一労働同一賃金」とは?|概要から導入後の日本社会の予想までを徹底解説!

【はじめに】
皆さんは「同一労働同一賃金」をご存知でしょうか?
同一労働同一賃金とは、「正社員や派遣社員、アルバイトなどの雇用形態に関わらず、同じ労働量であれば、同一の賃金を受け取るべき」という概念です。
従来は、労働環境や内容は同じであるにも関わらず、正社員か派遣社員で待遇や報酬が変わることがありました。

しかし近年、厚生労働省の改革により事業者の労働者に対して待遇に関する説明義務が強化されました。
この記事をご覧いただいている方の中にも、自身の雇用形態による待遇不足で悩まれている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の記事では、同一労働同一賃金に関する基本的な知識の部分から「導入後にどのように社会が変わると考えられるのか」など、幅広くご紹介をいたしますので、ぜひご覧ください。

【同一労働同一賃金とは?】
改めて、そもそも同一労働同一賃金とは、「同じ労働量であれば、立場にかかわらず同じ賃金を受け取るべき」という考え方です。
従来、福利厚生や報酬は雇用形態によって決められており、同じ労働量や労働状況でも満足のいく待遇を受けることができない労働者が多くいました。
しかし、厚生労働省が2018年に発表したガイドラインにより、2020年から正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差が禁止され、前述のような課題が解消されることが期待されています。

厚生労働省は「同一労働同一賃金」の導入に関して、以下のように記述しています。
“同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。”

つまり、「簡単に言えば雇用形態に関係なく、同じ仕事をしていれば同じ待遇を受けることができるようになる」ということです。
具体的には厚生労働省のガイドラインに基づいて、就業規則や賃金に関する制度の見直しなどが行われます。

厚生労働省|人口の年次推移
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000055150.pdf

同一労働同一賃金導入の背景の一つに「生産人口の減少」が挙げられます。
厚生労働省が2017年に行った調査によれば、日本の生産年齢人口(15歳〜64歳)は年々減少しており、高齢化現象が深刻な問題になっています。
生産人口が減少すれば、経済が停滞したり、サービスの拡大に支障がきたされて社会全体に大きな影響を及ぼしかねません。
そのような中、生産人口にしっかりと働いてもらうためには、性別や雇用形態などに関係なく働くことに専念をしてもらう必要があります。
こうしたことから、立場に関係なくフラットに働くことができる環境づくりを目的として「同一労働同一賃金」が始まったとされています。
フルタイム労働者に対するパートタイム労働者の賃金水準が7〜8割であるヨーロッパに対し、日本は6割弱程度と言われていますが、こうした課題が同一労働同一賃金によって解決されれば労働者のモチベーションも上がることが期待されます。

【厚生労働省のガイドラインについて】
「同一労働同一賃金」は厚生労働省のガイドラインに基づいて導入を進められています。
ガイドラインは4つの構成になっており、各種待遇に関する記述がされています。

⑴基本給
⑵賞与
⑶各種手当て
⑷福利厚生・教育訓練

基本給と賞与は、同じ時間や同じ成績を出していても、立場によって待遇が異なる場合でも同一の賃金を支給する必要があるということです。
各種手当てに関しては、業務の危険度や作業環境によって本来は変化するはずです。
しかし、従来は雇用形態に応じて手当てのカットなどが行われていたことから、ガイドラインでは各種手当において立場に関わらず同一の支給を要請しています。
福利厚生や教育訓練に関しても、同一の待遇が求められています。具体的には、慶弔休暇、福利厚生施設(食堂、休憩室など)、有給保証などの手当てを同等に支給すること等があります。

ただし、一部の雇用形態(無期雇用派遣など)では一度そうした休暇を長期でとってしまうと、同じ職場に戻ることができないことがありますので、注意が必要になります。
また、教育訓練(研修制度など)も同様に、「現在の職務に必要な技能・知識を習得するために実施するものについては、同一の職務内容であれば同一の、 違いがあれば違いに応じた実施を行わなければならない」とされています。
雇用形態に応じた施工開始時期が異なっています。

◎パートタイム・有期雇用労働法:大企業2020年4月1日、中小企業2021年4月1日より施行
◎労働者派遣法:2020年4月1日より施行

▽厚生労働省|同一労働同一賃金ガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html

◉導入事例
今回は具体的な企業の導入事例として、株式会社イトーヨーカ堂をご紹介いたします。
スーパーで有名なイトーヨーカ堂ですが、同一労働同一賃金に関する様々な取り組みをしており、平成27年度には厚生労働省による「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」にて最優良賞を受賞しています。

《以下、取組内容》(厚生労働省HPより)
①正社員とパートナー社員ともに職務に応じた評価を実施し、処遇全般に反映全社員に対し、半年ごとに職務と階層に応じた「セルフチェック用紙」で評価を実施。評価は、 賃金改定、賞与、ステップアップ(パートナー社員の等級区分)、役職登用、準社員・正社員登用 など全ての処遇に反映。 ※「パートナー社員」とは、同社のパートタイム労働者の呼称。 
② パートナー社員の意思を反映して、ステップアップできる制度業務遂行能力と本人の希望により、「レギュラー」、「キャリア」、最終的には正社員同等の業務を担う「リーダー」へとステップアップできる制度を導入。家庭の事情や仕事への価値観に応じ、自己申告によりステップアップにチャレンジできる制度としている。 パートナー社員やフィールド社員のままで役職者への登用を実施。 ※「フィールド社員」とは、同社のフルタイムの有期契約労働者の呼称。 
③ 店舗商品の品揃え・発注決定にパートナー社員の意見を取り入れ店舗ごとに開催する「地域生活委員会」に、地域に密着した生活者であるパートナー社員を参加させ、商圏の生活情報を共有し、商品の品揃え・発注の決定に活かしている。 
④ パートナー社員にメンターをつけメンタルフォローで定着率向上新規採用されたパートナー社員に、同じ店舗に勤務する先輩パートナー社員を「メンター」とし て指名し、業務上の精神的な不安をフォローし、定着率向上につなげている。 
⑤ パートナー社員にもワーク・ライフ・バランスをパートナー社員にも正社員と同様に「特別休暇」(結婚休暇・忌引き休暇等)・「育児休暇」を付 与。出産・育児・介護の両立支援制度である「リ・チャレンジプラン」も利用可能としている。パ ートナー社員の育児・介護休業の取得実績はのべ1000人以上。

【同一労働同一賃金によって起こる動き】

同一労働同一賃金によって起こる動き

では、同一労働同一賃金の動きが進めば、どのようなことが起こりうるのでしょうか。
良い面も悪い面もありますが、主に想定される変化は以下の通りです。
◎雇用形態に関わらず、フラットな関係になる
◎実力主義になる
◎正社員の負担が大きくなることもある
◎派遣社員やアルバイトにも責任を持って仕事をする義務が強くなる

良い面では、雇用形態や条件に関わらず職場がフラットな関係になることです。ただ、同時にフラットな関係は実力主義の文化を生み出します。給与や昇進が労働量や立場によって決まるわけではなく、実力で決まるのであれば、正社員よりも結果を出している派遣社員が良い待遇を受ける可能性も生まれます。こうしたことから、正社員だからといってずっと安定した立場でいることは難しくなるかもしれません。

また、悪い面では正社員の負担が大きくなることも起こりえます。従来、企業にとって派遣社員や契約社員を雇用するメリットは、人件費が正社員ほどかからないことなどがありました。しかし正社員との待遇差がなくなれば、派遣・契約社員を雇うメリットは少なくなりますから、今まで彼らが行っていた業務を正社員が担うことになり、負担が増えることが想定されます。

【さいごに】
さて、今回は同一労働同一賃金について、基本的な部分から導入によって起こりうる変化についてご紹介しました。
こうした良い面も悪い面も想定される同一労働同一賃金導入後の展望ですが、確実に起こる変化は「立場に関わらず誰もが仕事に責任を持つようになる」ことです。
また、立場がフラットになるということは、今まで正社員ではない雇用形態で働いていた人たちにもチャンスがあるということです。
同一労働同一賃金が浸透して、日本の人たちが自分の仕事に誇りを持って働くことができる環境が生まれれば良いですね。